
2026年4月6日

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が、2026年10月に義務化されます。
厚生労働省の調査では、カスハラに該当する事案を経験した企業は92.7%にのぼります。しかし「うちでも起きているが、どこから手をつければいいかわからない」という声は特に中小企業に多いのではないでしょうか。大企業の事例は参考になりにくく、専任の人事担当がいない中での対応体制づくりは一筋縄ではいきません。
この記事では、2026年10月義務化の法改正内容を整理しつつ、中小企業が現実的に取り組める優先対策フローを解説します。「完璧なマニュアルを作ってから動く」のではなく、「残り半年で何を最低限やれば間に合うか」という視点でお読みください。
カスタマーハラスメントとは:「クレーム」と何が違うのか
カスハラとクレームは混同されがちですが、区別は明確です。厚生労働省はカスハラを次のように定義しています。
「顧客等からのクレーム・言動のうち、その要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」
クレームは商品やサービスへの正当なフィードバックであり、企業の業務改善につながります。一方、カスハラは業務を著しく妨害し、従業員の心身に損害を与える行為です。
カスハラに当たる行為の代表的な類型
カスハラは7つの行為類型に整理できます。
①時間拘束・リピート型
長時間の電話、店内居座り、何度も繰り返す同一クレームなど。担当者1人が延々と拘束される状況が典型的です。厚生労働省の調査では、このタイプが最も多く52.0%を占めています。
②暴言・威嚇・脅迫型
怒鳴る、侮辱的な言葉で人格を否定する、反社会勢力とのつながりをほのめかす、「SNSに晒す」と脅すなど。
③暴力型・不退去型
物理的な暴力、退去を求めても居座り続ける行為。刑法上の暴行罪・不退去罪に該当する可能性があります。
④権威型・不当要求型
土下座や謝罪文を強要する、金銭目的の言いがかり、制度上対応できない要求を繰り返すなど。
⑤SNS・インターネット型
虚偽または誇張した情報をSNS・レビューサイトに投稿し、企業・従業員の名誉を毀損する行為です。
⑥セクシャルハラスメント型
性的な言動、待ち伏せ、執拗な連絡など。
⑦暴言・名誉棄損型
電話口や対面での侮辱的な発言、名誉を傷つける言動。厚生労働省の調査でもこのタイプが46.9%と2番目に多い類型です。
自社に「これはカスハラか、クレームか」という判断基準がなければ、現場の担当者は毎回1人で判断を迫られます。まず社内で「うちではここからカスハラと呼ぶ」という基準を設けることが出発点になります。
2026年10月に義務化される理由:法改正のポイントを整理する
2025年6月11日、「労働施策総合推進法等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)」が公布されました。この改正により、事業主はカスハラ対策を講じることが義務付けられます。施行日は公布日から1年6か月以内に政令で定められる日とされており、2026年12月10日までが期限となっています。
カスハラ対策が「努力目標」から「義務」へ変わる意味
これまでカスハラ対策は各社の裁量に任せられていました。しかしパワハラ・セクハラと同様に、事業主が措置を講じる法的義務が生じることになります。
対策が不十分と判断された場合、行政による助言・指導・勧告の対象となる可能性があります。さらに勧告に従わない場合は企業名の公表という制裁もありえます。従業員を守れなかった場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求に発展するリスクも残ります。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/customer-harassment-chatbot
なお、東京都では「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が2025年4月1日に先行施行されており、都内事業者はすでに対応が求められている状況です。
企業に求められる3つの対策措置とその具体的な内容
法改正で企業に求められる措置は大きく3つに整理されます。
① 方針の明確化と従業員への周知
企業として「カスハラには毅然とした態度で対応し、従業員を守る」という方針を文書化し、全従業員に周知します。研修の実施も含まれます。
具体的には以下を明文化してください。
自社におけるカスハラの定義(どの行為をカスハラと呼ぶか)
カスハラが発生した場合に担当者が取るべき初動対応
担当者が1人で抱え込まない体制(上司・管理職へのエスカレーション手順)
「対応を断ってよい基準」を明確にしておくことが現場を守るうえで最も重要です。曖昧なまま現場に任せると、担当者は「ここで断ったら自分のせいになるかも」という心理的プレッシャーを感じ続けることになります。
② 相談できる体制の整備
カスハラを受けた従業員が相談できる窓口を設けます。社内担当者を決めるか、外部EAP(従業員支援プログラム)を活用する方法があります。
中小企業の場合、専任のHR担当者を置くのが難しいケースも多いでしょう。その場合は「まず何でも話せる人を1名決める」ことで最低限の体制が整います。厚生労働省の「こころの耳」や都道府県の労働局が無料の相談窓口を提供しているため、外部リソースを組み合わせることをおすすめします。
③ カスハラ発生時の迅速な対応と再発防止
カスハラ発生後、個人任せにせず組織として対応し、再発を防ぐための仕組みを整えます。記録を残すこと、複数人で対応すること、深刻なケースでは法的措置(弁護士相談、警察通報)を検討することが含まれます。
事後対応より重要な「予防型アプローチ」
上記の3措置は「起きたことへの対処」が中心です。しかし現場の担当者を守るためには、そもそもカスハラが起きにくい環境をつくる「予防型アプローチ」がより根本的な解決策になります。
なぜ予防が事後対応より効果的なのか
カスハラを受けた従業員のダメージは深いものです。一度の激しい暴言体験がトラウマになり、電話や接客への恐怖感が残るケースもあります。「起きたら対応する」という後手の姿勢では、傷ついた従業員の回復コストが発生し続けてしまいます。
予防とは、悪質なクレーマーと従業員の直接接触機会そのものを減らすことです。
AIチャットボットによる一次対応で「直接接触」を緩衝する
問い合わせ対応にAIチャットボットを導入することで、初期の接触を人ではなくAIが担う形に変えられます。
SHIRITAIのようなAIチャットボットは、商品・サービスに関する定型的な質問や問い合わせに24時間対応します。特に以下のシーンで予防効果が期待できます。
夜間・休日の問い合わせ対応
悪質な電話やメッセージが多くなりがちな時間帯に、AIが一次対応を受け持ちます。担当者が翌朝確認したとき、AIで完結していれば直接対面する必要がなくなります。
同じ内容の繰り返しクレームへの対応
リピート型のカスハラに対して、AIが一定の回答を続けるだけで、担当者が毎回感情的な消耗を強いられる状況を防げます。
有人切替で「組織的対応」を自然に実現
ハイブリッド対応(AI×有人)の仕組みがあれば、担当者が1人で対応を抱え込まずに済みます。法改正が求める「複数人対応・エスカレーション」の仕組みを、チャットボットの設計によって自然に組み込めます。
AIチャットボットの導入は「人件費削減ツール」ではなく、従業員を悪質クレーマーから物理的に守るための緩衝装置として位置付けることができます。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/chatbot-inquiry-efficiency
カスタマーハラスメントが発生したときの対応フロー
予防策を整えつつ、発生時の対応フローも明確にしておく必要があります。
Step 1: 担当者が1人で判断しない体制を作る
カスハラが疑われる状況になったら、まず上司または管理職に報告します。「自分の対応が悪かったのかもしれない」という自責を防ぐためにも、報告をためらわない文化づくりが重要です。
Step 2: 事実を記録する
「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」発言・行動したかを客観的に記録します。電話対応の場合は録音が有効です。録音する旨を事前にアナウンスすることで、悪質な言動の抑止力にもなります。
Step 3: 対応を打ち切る判断基準を持つ
暴言・脅迫が続く場合、対応を打ち切る判断を管理職が行います。「断ってよい」という明確な基準が社内にあることが、担当者が安心して打ち切れる前提条件です。
Step 4: 深刻なケースでは法的措置を検討する
暴力・脅迫など刑法に抵触する行為が起きた場合は警察に通報します。執拗な電話・メール攻撃が続く場合は弁護士に相談し、文書での警告や民事訴訟を検討します。
Step 5: 従業員のケアと再発防止
被害を受けた担当者への心理的ケアを行い、同じ状況が繰り返されないよう対応フローを見直します。記録を事例として社内共有することで、他の従業員も同様のケースに備えられます。
中小企業が今すぐ始める優先対策ロードマップ
「全部やろうとして何もできない」を防ぐために、中小企業が取り組む順番をご紹介します。
フェーズ1(今すぐ〜1か月): 基準と方針の文書化
まず「うちではここからカスハラ」という基準と、「発生時の初動フロー(誰に報告するか)」を1枚のシートにまとめます。完璧である必要はありません。「こういう行為があったら上司に報告する」という共通認識を作ることが先決です。
社内の誰が相談窓口になるかを決め、担当者全員に周知します。
フェーズ2(1〜3か月): 記録の習慣化と研修
カスハラ事案を記録するシート(発生日時・内容・対応者・経緯)を整備し、発生したら記録する習慣を作ります。記録の蓄積が、後の対応マニュアル改善や法的対応の証拠になります。
全従業員向けに30〜60分程度のカスハラ対応研修を1回実施します。厚生労働省が公開している無料資料を使って社内研修を行うことでも対応できます。
フェーズ3(3〜6か月): 仕組みとツールの整備
問い合わせ対応の一部をAIチャットボットに担わせるなど、従業員への直接接触を減らす仕組みを検討します。Webサイトからの問い合わせが多い企業ほど、チャットボット導入による予防効果が高くなります。
電話対応の録音、または電話口での「本通話は品質向上のため録音しております」というアナウンスも、悪質な電話への抑止力になります。
2026年10月までに最低限整えるべきこと
法が求める「最低ライン」は3つです。
カスハラに対する方針の文書化・周知(A4一枚でも可)
相談窓口の設置(既存の相談担当者の兼任でも可)
発生時の対応フローの策定(「上司に報告する」から始めて構いません)
「完璧なマニュアルを作ってから周知する」という進め方では間に合わない可能性があります。まず方針と窓口を明確にして社内に伝え、実態に合わせて改善していく反復サイクルで進めることが現実的です。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/chatbot-pros-cons
まとめ
カスタマーハラスメント対策は、2026年10月を目処に全ての事業主に義務付けられます。企業に求められるのは(1)方針の明確化、(2)相談体制の整備、(3)発生時の適切な対応、の3つの措置ですが、根本的な従業員保護には「予防型アプローチ」も組み合わせることが重要です。
完璧を求めると動けなくなります。まず「うちのカスハラ基準」を1枚の紙にまとめることから始めてみてください。
SHIRITAIは、問い合わせへのAI一次対応によって、従業員と悪質クレーマーとの直接接触を減らす仕組みを構築できます。カスハラ予防を兼ねた問い合わせ対応の自動化に関心をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/customer-harassment-chatbot



