
2026年4月5日

AIチャットボットを導入すれば、問い合わせ対応の負担が減る。そのイメージは正しいのですが、一つ忘れがちなことがあります。
すべての問い合わせをAIで完結させることは、現時点ではできません。
クレーム対応、個別の事情が絡む相談、契約に関わる重要な判断——こうした対応は、AIが回答することでむしろ顧客の不満を高めてしまうことがあります。
「AIチャットボットを入れたのに、かえって対応品質が下がった」という失敗の多くは、有人対応とのつなぎ方を設計しないまま運用を始めたケースに集中しています。
この記事では、有人切替(ハイブリッド対応)の仕組みと設計のポイントを、実務的な視点から解説します。
AIチャットボットだけでは解決できない問い合わせが必ずある
AIチャットボットの得意領域は、繰り返し発生する定型的な問い合わせです。「営業時間は何時ですか?」「返品ポリシーを教えてください」「最小ロットはいくらですか?」——こうした質問には、AIが24時間・即座に・均一な品質で答えられます。
SHIRITAIの調査では、企業に届く問い合わせの約50%は定型的な内容だとされています。つまり、チャットボットを適切に設計すれば、半数の問い合わせをAIで処理できる計算になります。
ただし、残り半数には人間の判断が必要です。
AIが苦手な問い合わせには、主に以下のパターンがあります。
①感情が高まっているクレーム
「何度言えばわかるんだ」「もう解約する」——こうした感情的な言葉が出ている場面で、AIが淡々とFAQの回答を返すと、火に油を注ぐ結果になります。
②複数の条件が絡む個別相談
「子どもが3人いて、親の介護もあって、予算は○円で……」といった複雑な事情を持つ問い合わせは、AIが事前に用意されたデータベースだけで回答しようとすると、的外れな内容になりがちです。
③判断ミスが許されない重要事項
契約内容の確認、返金対応、法的な問題——誤った情報を提供することでトラブルに発展しかねない場面では、人間が責任を持って対応すべきです。
こうした問い合わせを「AIに全部任せる」という設計にしてしまうと、むしろ顧客満足度を下げる原因になります。
有人切替(ハイブリッド対応)とは何か
有人切替(ハイブリッド対応)とは、チャットボットの自動応答と、人間のオペレーターによる対応を組み合わせる仕組みのことです。
通常の流れはこうなります。
ユーザーがチャットボットに質問を入力する
AIが自動で回答を返す(定型的な問い合わせはここで完結)
AIが答えられない・答えるべきでない場合、有人対応に切り替える
オペレーター(担当者)が引き継いで対応する
チャットボットだけを使う「無人対応」と比べると、人件費やオペレーターの配置が必要になります。しかしその分、対応できる問い合わせの幅が広がり、顧客の離脱を防げます。
ポイントは、「AIがすべて対応する」でも「有人がすべて対応する」でもなく、それぞれの得意領域を組み合わせることです。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/chatbot-scenario-vs-ai
有人に切り替えるべき3つのシーン
実務的に「どこで切り替えるか」を考えると、以下の3つのシーンが基準になります。
① 感情的・クレーム系の問い合わせ
問い合わせ内容に「不満」「クレーム」「怒り」が感じられる場合は、即座に有人に切り替えることを推奨します。
特定のキーワード(「納得できない」「二度と使わない」「返金してほしい」など)を検知したタイミングで、自動的にオペレーターに切り替える設定も有効です。
また近年では、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策としても、ハイブリッド対応が注目されています。AIが一次対応を担うことで、感情的に高まった顧客との直接接触を減らし、従業員の精神的な負担を軽減できます。重篤なカスハラ案件の場合は、オペレーターへの引き継ぎ時に上長への報告フローを組み込む設計も考えられます。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/customer-harassment-chatbot
② 複雑な個別相談・見積もり対応
「一般的な回答ではなく、自分の状況に合わせた答えが欲しい」——このようなニーズには、AIによる定型回答が通用しません。
たとえば製造業の見積もり対応では、製品の種類・数量・納期・仕様変更の有無など、複数の条件が絡み合います。チャットボットが「詳細はお問い合わせフォームからどうぞ」と案内するだけでは機会損失になります。こうした場合に「担当者に直接相談する」への導線をスムーズに設計しておくと、そのまま成約につながるケースが増えます。
③ 契約・重要情報の確認
「このプランに申し込んでよいか確認したい」「解約するにはどの書類が必要か」——こうした問い合わせに、AIが不正確な回答をしてしまうと、契約トラブルや法的問題に発展するリスクがあります。
重要度の高い問い合わせカテゴリを事前に設定し、該当する内容については人間が対応する設計にすることで、リスクを最小化できます。
有人切替設計の3つのポイント
有人切替をうまく機能させるには、「切り替える・切り替えない」の判断だけでなく、どのように切り替えるかのプロセス設計が重要です。
① ユーザー自身が切り替えられる「担当者に聞く」ボタン
最もシンプルかつ重要な設計は、ユーザーが自分のタイミングで有人対応を選べるボタンを常時表示しておくことです。
「AIの回答では解決しない」と感じたユーザーが、すぐに担当者への連絡手段を見つけられる設計にしておくことで、離脱や不満を防げます。
注意すべきは、このボタンが見つけにくい場所に隠れていないことです。「AIの回答の後にしか表示されない」「何度もやり取りしてから出てくる」という設計だと、ユーザーがストレスを感じて会話を途中でやめてしまいます。
② AIが自動でエスカレーションする条件設計
会話の内容に応じて、AIが自動的に有人対応へ切り替えを促す設計も有効です。
具体的には以下のような条件が考えられます。
同じ質問を3回以上繰り返している(AIが解決できていないサイン)
感情的なキーワードが含まれている
「契約」「解約」「返金」などの重要キーワードが出てきた
一定の会話ターン数(往復数)を超えた
これらの条件に合致した場合、AIが「担当者がサポートできます」と案内する流れを自動化することで、ユーザーの不満が蓄積する前に手を打てます。
③ 会話履歴をオペレーターに引き継ぐ
有人切替で見落とされがちなのが、チャットボットとの会話履歴の引き継ぎです。
オペレーターに切り替わった際に「最初からお話しください」とユーザーが同じ説明を繰り返さなければならない場合、それ自体が大きな不満の種になります。
「チャットボットですでに○○と○○を確認しています」という状態でオペレーターが対応を引き継げると、スムーズな対応ができ、顧客満足度が上がります。ツール選定の際は、会話履歴がオペレーター側で確認できる機能があるかどうかを必ずチェックしてください。
「24時間対応×有人切替」の現実的な落としどころ
有人切替を導入する場合、一つ現実的な問題があります。オペレーターは24時間対応できない、という点です。
深夜や休日に問い合わせが来ても、担当者が誰もいなければ有人対応はできません。では、有人切替はあきらめるべきでしょうか。そうではありません。
営業時間内と営業時間外で設計を分ける
現実的な運用は、時間帯によって設計を変えることです。
営業時間内:AIが一次対応し、解決しない場合は有人対応に切り替え
営業時間外:AIが対応し、「○時以降に担当者よりご連絡します」と案内して翌営業日の対応につなぐ
この設計であれば、深夜でも「一次対応のみAI」として顧客を待たせることなく受け付け、翌日の有人対応でフォローできます。
「問い合わせをしたら返事が来ない」という顧客の不満は、実は「待っているのに何も知らされない」ことから生じるケースが多いです。「明日○時以降に担当者からご連絡します」とAIが案内するだけで、顧客の不安は大幅に軽減されます。
中小企業でハイブリッド対応を現実的に機能させるには
中小企業の場合、専任のコールセンタースタッフを配置するのは難しいことが多いです。CS担当が営業やバックオフィスを兼務しているケースも珍しくありません。
こうした環境でハイブリッド対応を機能させるコツは、有人対応に回す問い合わせの数を最小化することです。
AIがしっかり対応できる定型問い合わせの精度を上げ、有人に回るのは「どうしても人が必要な案件だけ」にする——この設計ができれば、兼務スタッフでも対応が成立します。
SHIRITAIの調査では、適切に設計されたAIチャットボットは問い合わせの50%前後をAI完結で処理できるとされています。つまり、有人に回る問い合わせを現状の半数程度に減らすことが現実的に可能です。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/chatbot-roi-cost-effectiveness
ハイブリッド対応が標準搭載されたAIチャットボット「SHIRITAI」の場合
AIチャットボットの中には、有人切替を別途オプションで追加するものと、標準機能として搭載しているものがあります。SHIRITAIは、ハイブリッド対応を標準機能として搭載しています。
完結率から見える「AIが処理できる比率」
SHIRITAIの導入事例を見ると、業種や用途によってAI完結率が異なります。
関東エリアの総合病院:月300〜400回の利用で、約47.5%がAI一次対応で完結
インフルエンサーマッチングサービス:月800〜1,000回の利用で、完結率60%
製造業(今治タオルメーカー):月50回の利用で、完結率30%(見積もり案件は担当者への誘導を設計)
製造業のように個別対応が多い業種は完結率が下がります。一方、定型的な問い合わせが多い医療・サービス業では半数以上がAIで完結しています。
重要なのは、完結率が低い=チャットボットが使えないではないという点です。
製造業の事例では、「見積もり依頼が多いが、チャットボット経由でそのまま所定フォームへ誘導できる」という設計で機能しています。有人切替を担当者への問い合わせフォームへの誘導として使うことで、営業担当者が後で対応できる体制が整います。
SHIRITAIのハイブリッド機能の使い方
SHIRITAIでは、AIチャットボットの画面に「担当者に聞く」ボタンを設置できます。ユーザーがこのボタンを押すと、企業側の担当者への連絡につながる設計が可能です。
また、SHIRITAIのカスタマイズ機能を使えば、用途に応じてモードを切り替えることができます。
カスタマーサポートモード:問い合わせ対応に特化した回答設計
営業モード:商品・サービスの説明やお問い合わせ誘導に特化
取扱説明書モード:詳細情報の案内に特化
用途別にモードを分けておくことで、AIが対応すべき範囲と人間が対応すべき範囲を自然に整理できます。
さらに、ユーザーが入力した内容はすべて記録されます。どんな質問が多く来ているか、どこでAIが答えられなかったかを分析することで、チャットボットの精度を改善しながら有人切替の閾値を調整していくことが可能です。
まとめ:AIと人の分担を設計することが、チャットボット導入成功のカギ
チャットボットの有人切替(ハイブリッド対応)は、「AIをどこまで信頼するか」ではなく、「AIと人間がそれぞれどこを担当するか」を設計することです。
本記事のポイントを整理します。
AIが苦手な問い合わせ(感情的なクレーム・複雑な個別相談・重要な契約確認)は人間が担当する
有人切替には「ユーザーが選べるボタン」「AIが自動エスカレーション」「会話履歴の引き継ぎ」の3つの設計が重要
営業時間内外で設計を分けることで、24時間対応×有人切替を両立できる
中小企業の場合、AIで処理できる定型問い合わせの精度を上げ、有人対応の負担を最小化することが現実的
チャットボット導入の失敗事例の多くは、シナリオ設計や有人切替の設計を省略してしまったことに起因しています。有人切替の設計まで含めて考えることが、チャットボットを「本当に使えるツール」にする近道です。
参考はこちら:https://shiritai-chat.com/column/chatbot-failure-cases
SHIRITAIは、ハイブリッド対応を標準搭載した生成AIチャットボットです。商品データベースをもとにAIがリアルタイムで回答し、AIで対応しきれない問い合わせは担当者へスムーズに引き継ぐ設計になっています。AIと人の分担設計を最初からサポートした導入支援を行っています。詳しくはこちらからお問い合わせください。



