シナリオ型と生成AI型のチャットボットを比較する|自社に合うほうを見極めるための5つの軸
シナリオ型と生成AI型のどちらを選ぶかは、その窓口に来る質問を、あらかじめ書き出しきれるかどうかで決まってきます。手続きの案内のように聞かれる中身が決まっているならボタンで進む形で足りますし、言い方が人それぞれで読み切れない領域ほど、文章のまま受け取れる作りが要ります。
ややこしいのは「AI型」という呼び方に、質問に近いFAQを探して返す従来のものと、文章そのものを組み立てる生成AI型の両方が入っていることです。以下で生成AI型と書くのは後者を指していて、シナリオ型と並べているのもそちらになります。
シナリオ型チャットボットの仕組みとできること、できないこと
チャットボットの導入を検討し始めると、たいてい最初にぶつかるのが「シナリオ型」と「AI型(生成AI型)」という分類です。何が違うのかよく分からないまま製品比較に入ってしまい、見積もりや機能表を眺めながら判断に迷う、という相談をよく受けます。両者は仕組みが根本から異なり、得意な場面も苦手な場面も大きく違います。まずはシナリオ型から整理します。

選択肢を選んで進む「フローチャート型」の回答方式
シナリオ型チャットボットは、事前に設計したフローチャートに沿って会話を進める仕組みです。ユーザーがボタンをタップするたびに次の選択肢が表示され、枝分かれを繰り返しながら最終的な回答にたどり着く構造になっています。
たとえばホームページに設置したチャットボットが、最初に「営業時間を知りたい」「料金を確認したい」「担当者に連絡したい」の3つを提示し、「料金を確認したい」を選ぶと「プランAについて」「プランBについて」と次の階層が表示される、という流れです。ユーザーが自由に文章を入力する必要がなく、タップだけで完結できるのがシナリオ型の特徴です。
シナリオ型のメリット
シナリオ型の利点は、まず導入コストの低さに表れます。月額1万円前後から使えるサービスも多く、初期費用がかからないプランも珍しくありません。生成AI型と比較すると毎月の費用を大幅に抑えられるため、「まずは試したい」という初期段階の企業にとって始めやすい選択肢になります。
学習データの準備が不要なため、立ち上げが早い点もメリットです。既存のFAQやQ&Aがあれば、それをもとにシナリオを設計するだけで稼働できます。専門的なIT知識がなくてもノーコードで設定できる製品も増えており、運用担当者が情報システム部門でなくても扱いやすい構成です。
回答の内容を管理しやすい点も実務上の強みです。「このボタンを押せばこの回答が出る」という挙動が明確なので、誤った情報を伝えるリスクを最小化できます。案内の経路や文言を完全に統制したい場合には、シナリオ型の制御性がそのまま価値になります。
シナリオ型の限界:想定外の質問に答えられない
最大の弱点は、シナリオに存在しない質問には一切答えられないことです。「最小ロットで発注した場合の納期は?」「先日注文した商品の仕様を変更できますか?」といった選択肢に含まれない質問が来た瞬間、「担当者にお問い合わせください」という定型文しか返せなくなります。ユーザーはチャットボットで自己解決しようとしたのに、結局有人対応へ誘導されることになり、「このチャットボット、使えない」という印象が残ります。
もう一つの課題は、シナリオのメンテナンスに継続的な工数がかかる点です。商品ラインナップが変わるたび、料金が改定されるたびに、既存のシナリオを修正する必要があります。ビジネスの変化が速い企業では修正が追いつかず、シナリオが実態と乖離したまま動き続けるケースも起きます。
導入費が安く見えても、シナリオの修正工数で結果的に高くつくことがあります。費用は「導入費+運用の手間」のセットで比べるのが安全です。
シナリオ型の限界が実際の導入失敗にどうつながるかは、チャットボット導入の失敗事例から考えるで詳しく解説しています。
AI型(生成AI型)チャットボットの仕組みと従来AIとの違い
「AI型」とひとくちに言っても、数年前までの「AI型(機械学習型)」と、近年急速に普及している「生成AI型」では仕組みが大きく異なります。この違いを押さえないまま製品比較に入ると、判断を誤る可能性があります。
従来のAI型と生成AI型:「探す」から「生成する」へ
従来のAI型(機械学習型)は、質問と回答のペアをあらかじめ大量に登録し、ユーザーの入力文章と最も近い質問を機械学習で探し出して、対応する回答を返す仕組みです。「辞書型」とも呼ばれます。シナリオ型と違って自由な文章入力に対応できますが、登録されていない質問には答えられず、ペアを大量に用意する初期準備と継続的な精度改善のメンテナンスが必要でした。
生成AI型は、自社の商品情報・FAQ・業務ルールなどをまとめたデータベースを持たせ、ユーザーの質問に応じてAIがその都度、データベースを参照しながら回答を文章として生成します。質問と回答のペアを登録するのではなく、「このデータを知っているAI」として機能させるのが従来型との本質的な違いです。
商品カタログや仕様書、価格表といった既存の情報を資料の形で読み込ませるだけで動き始めるため、従来のAI型に比べて初期準備が大幅に軽くなりました。情報を更新したい場合もデータベース側を書き直すだけで回答に反映されます。生成AI型そのものの全体像や、従来AI型との線引きをもう少し丁寧に見たい方は、生成AIチャットボットを整理するもあわせて読んでみてください。
生成AI型のメリット
第一の強みは、想定外の質問に対応できる点です。「AプランとBプランを比べた場合どちらが向いていますか」「このオプションをつけた場合の合計金額はいくらですか」といった複合的・計算が必要な質問でも、データベースの情報を組み合わせてその場で回答を生成します。シナリオに書いていなかった質問パターンに柔軟に応答できるのは、シナリオ型との最大の差です。
回答形式がテキストに限らない点も、生成AI型の特徴です。画像・動画・PDFリンク・地図など多様な形式を組み合わせることで、文章だけでは伝わりにくい商品スペックや操作手順を直感的に届けられます。製品カタログを見ながら説明するような体験を、チャットボット上で再現できます。
「情報を更新したらシナリオも直す」という作業から解放される点も見逃せません。データベース側を書き換えれば回答に自動反映されるため、料金改定・新商品追加・サービス変更があってもシナリオを一から修正する必要がなく、ビジネスの変化が速い現場ほど効果が積み上がります。
生成AI型の注意点
AIが回答を生成する以上、100%の正確性を保証することは難しいのが現実です。特定の商品に特化したデータベースを持たせることで精度を高められますが、複雑な事例や例外的な質問ではAIが誤った情報を返す可能性も残ります。AI対応で解決できない場合に担当者へ切り替えるハイブリッド対応とセットで導入することが、現場での取りこぼしを防ぐうえで重要です。
シナリオ型と生成AI型を5つの軸で比較する
両者の違いを整理するために、実務で判断を分ける5つの軸で比較します。
| 比較軸 | シナリオ型 | 生成AI型 |
|---|---|---|
| 想定外の質問への対応 | ✕ シナリオ外は回答不可 | ○ データベース内で柔軟に対応 |
| 初期準備の手間 | △ シナリオの設計・構築が必要 | ○ 商品情報・FAQをまとめるだけ |
| メンテナンスコスト | ✕ 変更のたびにシナリオ修正が必要 | ○ データベース更新で回答に反映 |
| 回答の管理しやすさ | ○ 高い(設計通りに動く) | △ AIが生成するため完全な制御は困難 |
| 導入費用 | ○ 安価(月1万円〜) | △ 中〜高価(機能・規模による) |
表で並べると、シナリオ型は「コストを抑えつつ、決まった経路での案内を確実にしたい」場合に強く、生成AI型は「多様な質問への対応力と運用効率」を優先する場合に向くことが分かります。どちらが絶対的に優れているわけではなく、自社の状況に合わせた選択が判断の中心になります。
「シナリオ型でいい」が通じなくなる3つのサイン
すでにシナリオ型のチャットボットを運用している場合、以下のような状況が起きていないかを確認してください。これらは、シナリオ型が現場に合わなくなっているサインです。
「それについてはお答えできません」が増えている
チャットボットが回答を返せずに会話が終了するケースが増えている場合、シナリオが顧客の実際の質問をカバーしきれていません。導入当初は問い合わせの8割をカバーできていたとしても、商品が増えたりサービス内容が変わったりするにつれて、シナリオは実態とズレていきます。「チャットボットで聞いたけど分からなかったので電話した」という体験が積み重なると、ボット自体が使われなくなります。
シナリオのメンテナンスに追われている
「チャットボットの修正作業に毎週数時間を取られている」という状況であれば、業務効率化のために入れたツールが逆に工数を生んでいることになります。シナリオ型は一度設計したら完成ではなく、ビジネスの変化に合わせた継続的な修正が前提です。担当者が交代したタイミングや、メンテナンスが後回しになった時期にシナリオが古いまま動き続け、誤った情報を案内してしまうリスクもあります。
顧客がチャットボットを使わず直接電話してくる
チャットボットを設置したのに問い合わせ電話の件数が変わらない、あるいは「チャットボットで聞いたら分からなかった」というフィードバックが届いている場合、顧客がチャットボットを信頼していないか、使い勝手が悪いと感じているサインです。シナリオ型の選択式UIは、顧客が知りたい情報のカテゴリをあらかじめ把握していないと迷子になりやすいため、複数回のタップを経て「担当者に聞く」に至るルートが増えると、離脱が積み上がります。
チャットボット導入の費用対効果の試算方法については、チャットボット導入の費用対効果を正しく試算するで詳しく解説しています。
どちらを選ぶべきか:用途別の判断フロー
理屈の話より、「うちの場合はどちらか」を判断するための拠り所を整理します。

シナリオ型が向いているケース
問い合わせの種類がほぼ固定されている場合は、シナリオ型で十分対応できます。ECサイトの発送状況・返品・ログイン問題のように、来る質問のパターンが8〜10種類程度に収まるケースであれば、シナリオで全網羅しやすいです。
また「最終的に問い合わせフォームへ誘導する」「特定のページへ案内する」といった、チャットボットに果たしてほしい役割が明確に決まっているケースも、シナリオ型の制御性が活きます。「回答させる」より「案内させる」用途と理解すると判断しやすいです。
生成AI型が向いているケース
商品・サービスの種類が多く、質問の幅が広い場合は生成AI型が向いています。製造業の製品仕様や受注条件、医療機関の診療科や予約案内、マッチングサービスのアカウント操作に関する質問など、「来る質問を事前に全列挙できない」領域では、シナリオ型のカバー率に限界が来ます。
すでにシナリオ型を使っていてメンテナンスが重荷になっている場合や、24時間対応で問い合わせをできるだけ自動完結させたい場合も、生成AI型への移行が効果的に働きます。
型そのものを比べる前に「何のために置くのか」から絞り込みたいときは、チャットボットの選び方を整理するに判断の順番をまとめています。
「商品データベース×生成AI」という第三の選択肢
シナリオ型と生成AI型の違いを整理していくと、企業が本当に求めているのは「自社商品の情報に特化しつつ、想定外の質問にも柔軟に答えてくれる」という組み合わせであることが見えてきます。汎用的な生成AIを入れただけでは自社商品の情報が不足し、シナリオ型では質問の幅に対応しきれない。その間を埋める設計として注目されているのが、自社商品データベースを核に据えて生成AIが回答する仕組みです。この「自社の資料を検索して、その内容をもとに答える」やり方はRAGと呼ばれ、仕組みをかみ砕いた解説はRAGチャットボットとは?非エンジニアでもわかる仕組みと、中小企業での現実的な活用法にまとめています。
AIに世の中全般の知識を持たせるのではなく、自社の商品情報・料金体系・FAQをデータベースとして構築し、その範囲内でAIがその場で回答を生成します。自社商品に関する「想定外の質問」にも答えられ、汎用AIのように無関係な話題に脱線するリスクも抑えられます。
SHIRITAIではこうなる:1つの管理画面で、シナリオ型も生成AI型も
SHIRITAI(シリタイ)は、いま整理してきた「自社のデータに強い生成AI型」を土台にしたAIチャットボットです。(管理画面では、この生成AI型を「AI型」と表示します。)ただ、生成AI型に寄せきっているわけではありません。1つの管理画面から、AI型(生成AI型)とシナリオ型のどちらでもチャットボットを作れます。作成時に応答タイプとして選び、あとで変えたくなっても「詳細設定」の応答タイプから切り替えられます。それまでに登録した設定が消えることもありません。

シナリオ型を選んだときは、「シナリオエディタ」で会話の流れを組み立てます。「開始」「メッセージ」「選択肢」「お問い合わせ」「資料ダウンロード」といった部品(ノード)をキャンバスに置き、線でつないでいくと、選択肢をたどる会話ができあがります。文言や分岐は右側のパネルで設定し、テスト実行を押せば利用者の目線から流れを確かめられます。保存するたびに版が残るので、大きく作り替える前でも元に戻せるはずです。

AI型(生成AI型)を選んだときは、シナリオを描く代わりに「ナレッジ(回答のもと)」を登録していきます。あとは来た質問に合わせて、AIがナレッジを組み合わせ、その場で回答を作ります。返す内容はテキストだけでなく、画像・動画・地図・PDFのリンクなども添えられます。

どちらか一方に決めきる必要もありません。チャットボットは目的ごとに複数作れるので、「よくある質問はAI型、資料請求はシナリオ型」のように分けて持たせる使い方もできます。そして、AIだけでは答えきれない相談が来たときのために、「担当者に聞く」ボタンから有人対応へ引き継ぐ導線も用意されています。完全な自動化ではなく、AIと人で分担する前提に立っておくと、現場での取りこぼしは防ぎやすくなるはずです。
Q. シナリオ型から生成AI型へ、いつ移行すればいいですか。
A. 「答えられない質問」と「毎週の修正作業」が増えてきたときが目安です。運用の手間が月5時間を超えたら、一度比較してみる価値があります。
困りごと別|SHIRITAIで解決できること10
型で迷っているときに引っかかることを並べます。左がいま起きていること、右がSHIRITAIでどう受けられるかです。
| いま起きていること | SHIRITAIでどう受けるか |
|---|---|
| 言い方が少し違うと答えられない | 質問文ではなく答えの元を登録するので、意味で拾って答える |
| 商品が増えるたびに分岐を足している | 登録内容を足すだけで、会話の枝を作り直さない |
| 条件つきの質問で止まってしまう | 登録した条件を組み合わせて返せる |
| 「その質問には答えられません」で終わる | 答えきれないものは担当者へ引き継ぐ導線を用意できる |
| シナリオの管理に時間が取られている | 運用の中心は答えの追加と見直しになる |
| 何を聞かれているか把握できていない | 実際に来た質問が利用履歴に残る |
| 担当者によって答えが違う | 登録した内容が答えの正本になる |
| 画像や地図で伝えたいのに文字しか返せない | 画像・動画・リンクを添えて答えられる |
| 設定が複雑で触れる人が限られる | 答えの追加は管理画面から自分でできる |
| 入れ替えの判断がつかない | 2週間の無料トライアルで、自社の質問を投げて比べられる |
全部を一度に決める必要はありません。いま詰まっている質問を3つ書き出して、それが返るかどうかを試すところからで足ります。
よくある質問
シナリオ型を選んではいけないのですか?
そんなことはありません。聞かれることが数種類に決まっていて、しばらく変わらないなら、シナリオ型のほうが分かりやすく作れます。合わなくなるのは商品が増えたときと、条件つきの質問が多いときです。自社がどちらかを先に見てください。
いま使っているシナリオ型から乗り換えるべきですか?
まず、答えられなかった質問がどれくらい出ているかを見てください。そこが少なければ、置き場所や登録内容の見直しで足ります。答えられない質問が積み上がっているなら、型の問題です。判断のしかたはチャットボットは使えない、と感じる理由にまとめています。
生成AI型だと、嘘を答えてしまいませんか?
汎用のAIをそのまま使うと、その心配はあります。SHIRITAIは登録した内容の範囲で答える作りなので、教えていないことを推測では答えません。仕組みはRAGチャットボットとは?非エンジニアでもわかる仕組みと、中小企業での現実的な活用法で読めます。
作るときの手間は、どちらが軽いですか?
最初の1件を出すまではシナリオ型のほうが早いことが多いです。差がつくのはそのあとで、シナリオ型は想定する聞かれ方の数だけ枝が増えます。半年後の手間まで含めて比べてください。
両方の型を組み合わせることはできますか?
できます。決まった手続きの案内は選択肢で進めて、それ以外は文章で答える、という形です。ただし最初から複雑に組むより、まず答えの登録だけで動かして、必要になった場面で足すほうが運用は続きます。
まとめ:種類選びより「目的の明確化」が先
シナリオ型と生成AI型のどちらが優れているかは、一概には言えません。問い合わせの種類が限定的でコストを抑えたい場合はシナリオ型が合理的ですし、多様な質問への対応力やメンテナンス効率を重視するなら生成AI型が適しています。
ただし、選択で迷う根本の原因は「何のためにチャットボットを使うのか」が曖昧なまま製品比較に入ることにあります。カスタマーサポートの電話件数を減らしたいのか、営業時間外の取りこぼしを防ぎたいのか、顧客の自己解決率を上げてコストを削減したいのか。目的によって、必要な機能と向いている種類が変わります。
まず目的を定め、次に現場の課題(問い合わせの種類・量・複雑さ)を整理する。その二つが揃ってからシナリオ型か生成AI型かを比較することで、「導入したけど思っていたものと違った」という結果を避けられます。
仕組み全体の分解はチャットボットの自動応答の仕組み、型ごとの精度の上げ方はチャットボットの回答精度を上げる方法で詳しく解説しています。無料プランで粘るか移行するかの判断はチャットボット無料版から本格導入へも参考になります。
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