問い合わせ対応の効率化|AIに任せる質問と、人が持つ質問の振り分け方
問い合わせ対応の効率化は、1週間だけ件数を数えて、届いたものを3つに仕分けるところから動きはじめます。答えが決まっていて判断の要らないものだけを自動に回し、一次対応まででよいもの、人が受けると決めたものを分けておく。この線引きが先にあると、あとの作業はだいぶ軽くなるのではないでしょうか。
仕分けを始める前に決めておきたいのは、自動に回さない側の線です。金額が動く相談や、これまでの経緯がある話のように、受け止め方が問われるものを先に人へ寄せておく。任せる範囲より、任せない範囲を先に決めるほうが後で迷いません。
人を増やしても、問い合わせ対応が楽にならない
「問い合わせが増えたので人を増やした。それでも追いつかない」。相談を受けていて、いちばんよく聞く話だと思います。
人数で吸収する形にしている限り、届く量が増えれば必要な人数も増えます。繁忙期には集中しますし、営業時間外は取りこぼします。ベテランが抜ければ答えの質も落ちます。
この構造の根っこにあるのは、問い合わせを全部「同じ仕事」として受けていることだと思います。実際には、誰が答えても同じになる質問と、その人の事情を聞かないと答えられない相談が、同じ窓口に混ざって届いています。前者に時間を取られて、後者に手が回らない。これが「楽にならない」の中身です。
だとすると、やるべきことは減らすことではなく、分けることになります。
まず、自社の問い合わせを数える
分ける前に、どれだけ届いているかを数えます。1週間だけで構いません。届いた経路(電話・メール・チャット・口頭)ごとに正の字で数えて、1件あたりにかかる時間を掛けます。
月300件で1件15分なら、月75時間です。担当者ひとりの半月ぶんにあたります。この数字が出ていると、社内で話を通すときの説明もしやすくなります。
届く問い合わせを3つに仕分ける
数え終わったら、中身を3つに分けます。この仕分けが、今回いちばん大事なところです。

| 種類 | 中身 | 例 | 誰が受けるか |
|---|---|---|---|
| A 定型 | 答えがほぼ決まっていて、判断が要らない | 営業時間、送料、返品の手順、料金 | AIに任せる |
| B 個別の確認 | その人の情報を照らし合わせる必要がある | 注文がどこまで進んでいるか、契約内容の変更 | AIが受けて、人へ渡す |
| C 気持ちの話 | 経緯があり、まず受け止める必要がある | 繰り返し起きている不具合、対応への不満 | 人が受ける |
A:誰が答えても同じになる質問
「営業時間は何時までですか」「返品はどうすればいいですか」。答えはどこかに書いてあり、担当者の判断も要りません。ここは自動化できる範囲そのものです。
自社でAがどれくらいあるかは、数えた問い合わせを見ればすぐ分かります。ここが半分を超えているなら、着手する価値があります。3割しかないなら、自動化より先に手を打つべきところが別にあるかもしれません。
B:一次対応まではできる質問
「先週注文したものがまだ届かない」「契約内容を変えたいが、自分がどのプランか分からない」。個別の情報を見ないと答えが出ないので、最後まで自動では終わりません。
ただ、手前の案内までは任せられます。「注文状況はマイページのここで確認できます」「変更の手続きにはこの情報が要ります」と伝えたうえで、必要なら担当者へ渡す。この形なら、担当者が受け取る時点で用件が整理されています。
C:自動化しないと決めておく質問
「前から同じ問題が続いている」「対応が遅くて困っている」。ここを自動で完結させると、話がこじれます。受け止めて、人につなぐ。それ以上を求めないほうがよいと思います。
3つのうち、先に決めるべきなのはCの線引きです。任せる範囲を決めるより、任せない範囲を決めるほうが、後で迷いません。
Cに入れる目印は、「答えの内容ではなく、受け止め方が問われている」かどうかだと思います。金額が動く相談、例外を認めるかどうかの判断、これまでの経緯がある話。この3つが混ざっていたら、迷わず人が受ける側に置いてください。正しい情報を返しても、相手が求めているのがそれではない場面があります。
迷ったときの2つの軸
A・B・Cのどれに入るか判断しづらい問い合わせもあります。そのときは2つだけ見てください。答えが決まっているかどうかと、その人の情報が要るかどうかです。

この2軸で置いてみると、たいていの問い合わせは自然とどこかに収まります。窓口全体の受け持ちの決め方はカスタマーサポートのAIチャットボット|任せる範囲の決め方と、品質のそろえ方にもまとめています。
「答えられません」を返す窓口を作らない
振り分けを決めても、道具の選び方を間違えると同じところで詰まります。
あらかじめ用意した選択肢をたどるシナリオ型は、登録していない言い回しに反応できません。「営業時間を教えてください」は答えられても、「何時まで開いてますか」で止まる、ということが起こります。お客さまから見れば「聞いたのに分からなかった」という体験なので、結局そのあと電話がかかってきます。効率化のつもりが、仕事を増やす形です。
同じことを聞いているのに言い方が違う、という例は思っている以上に多くあります。実際に届く言い回しを並べてみると、感覚がつかめると思います。
| 聞きたいこと | 実際に届く言い回し |
|---|---|
| 営業時間 | 何時まで開いてますか/土曜はやってますか/今日はもう閉まりましたか |
| 送料 | 配送料いくら/タダになる金額は/沖縄だと変わりますか |
| 返品 | 返せますか/サイズ違ったらどうすれば/交換もできますか |
右の列を全部あらかじめ登録しておくのは現実的ではありません。言い回しを網羅するのではなく、答えを1つ用意して意味で拾ってもらうほうが、運用は続きます。
商品やサービスが増えるほど、選択肢の枝を足し続ける作業も重くなります。この行き詰まり方はチャットボット導入の失敗事例から考える|なぜ使われないまま終わるのか、根本原因と対策を読み解くにも出てきます。型の違いそのものはシナリオ型と生成AI型のチャットボットを比較するで整理しています。
SHIRITAIでは、どう作るか
1. Aの答えを登録する
仕分けたAの質問を、多い順に登録します。全部を一度に入れる必要はありません。上位20件で、届く質問のかなりの部分をふさげます。

登録するときのコツは、社内向けの言い方ではなくお客さまに返す言葉で書くことです。「返品規程第3条による」ではなく「到着から8日以内、未使用のものが対象です」と書いておくと、そのまま返せます。
2. BとCを人へ渡す線を決める
どこから人が出るかを設定しておきます。ここを曖昧にしたまま公開すると、Cの相談まで自動で返してしまいます。

お客さま側から担当者を呼べる導線も用意しておくと、AIが答えきれなかったときの逃げ道になります。渡し方の設計はAIチャットボットの有人切替(ハイブリッド対応)をうまく設計する方法:「いつ渡すか」で決まる顧客満足度で詳しく書いています。
3. 仕分けが合っていたかを、記録で確かめる
公開したあと、実際に来た質問を見ます。Aだと思っていたのに答えられていないもの、Cに入れていたのに実は定型だったもの。最初の仕分けは、必ずずれます。

月に一度この画面を見て、登録内容を足したり線を引き直したりする。それだけで窓口は目に見えて賢くなります。読み方は会話ログとは?チャットボットの記録から「お客さまの本音」を見つける読み方と活かし方にまとめました。
こんな質問に、こう答えます
A・B・Cのそれぞれで、実際にどう返るかの例です。
Aの例。登録した内容:営業は平日9時〜18時、土日祝は休み。年末年始は12/29〜1/3
土曜って何時まで開いてますか
土曜日は定休日となっております。営業は平日9時から18時まででして、土日祝はお休みをいただいています。お急ぎのご用件でしたら、この場でご質問いただければお答えできることもあります。
Bの例。登録した内容:注文状況はマイページの「注文履歴」で確認できる。発送後は追跡番号を表示
先週頼んだのがまだ来ないんですけど
ご注文の状況は、マイページの「注文履歴」からご確認いただけます。発送が済んでいる場合は追跡番号が表示されますので、配送状況もそちらで追えます。表示が「準備中」のまま動いていない場合は、担当者が個別に確認いたしますので、ご注文番号をお知らせください。
Cの例。自動で完結させず、受け止めて人へ渡す
同じ不具合が3回目です。いいかげんにしてほしい
度重なるご不便をおかけしており、申し訳ございません。これまでの経緯を確認したうえで対応いたしますので、担当者におつなぎします。差し支えなければ、直近でご連絡いただいた時期をお聞かせください。
困りごと別|SHIRITAIで解決できること10
左が現場でいま起きていること、右がSHIRITAIでどう受けられるかです。
| いま起きていること | SHIRITAIでどう受けるか |
|---|---|
| 定型質問に時間を取られ、個別対応が後回しになる | Aを登録して自動で返し、人の時間をBとCに回す |
| 言い回しが違うだけで答えられない | 意味で拾って、登録した内容から答える |
| 人を増やしても追いつかない | 件数ではなく受け持ちを分けて構造から変える |
| 担当者によって答えが違う | 登録した内容が答えの正本になる |
| 営業時間外の問い合わせが翌営業日まで止まる | 時間帯に関係なく一次対応が動く |
| 引き継ぎのときに同じ説明をさせている | やり取りが見えた状態で担当者が入る |
| 苦情まで自動で返されるのが不安 | 人が受ける線をあらかじめ設定できる |
| 何が多く聞かれているか把握できていない | 実際に来た質問が利用履歴に残る |
| 仕分けが合っていたか確かめられない | 答えられなかった質問から、登録内容を足せる |
| 設置や運用に人手を割けない | 発行されたコードを貼るだけで置ける |
全部を一度にやる必要はありません。Aの上位20件を登録して、Cの線を引く。この2つで十分に始められます。
よくある質問
A・B・Cの割合は、どうやって数えればいいですか?
1週間ぶんの問い合わせを紙に書き出して、3つに印を付けるだけで足ります。厳密さより、おおよその比率が分かることが目的です。判断に迷うものはBに入れておいてください。実際に運用してみると、Bだと思っていたものがAだった、という発見が出てきます。
Aが少ない場合、導入する意味はありませんか?
Aが3割を切るようなら、自動化より先に手を打つところがあるかもしれません。ただ、Bの「手前の案内」まで含めると任せられる範囲は広がります。まずはBの中身を見て、案内だけで済むものがどれくらいあるかを確かめてみてください。
問い合わせ件数そのものは減りますか?
チャットを含めた総数は増えることが多いです。電話をかけるほどではないと諦められていた質問が表に出てくるためです。見るべきは人が直接対応した件数のほうです。ここが減っていれば、振り分けは効いています。
人が受ける線は、あとから変えられますか?
変えられますし、変える前提で始めたほうがうまくいきます。最初は広めに人が受ける設定にしておいて、記録を見ながら任せる範囲を広げていく順番をおすすめします。逆にすると、答えられない質問を放置した状態が先に世に出てしまいます。
準備にどれくらいかかりますか?
作業の中心は、Aの答えを用意するところです。すでに返信のひな形がある会社なら早く済みます。逆に「担当者ごとに書き方が違う」状態だと、そこを決めるところから始まります。進め方はチャットボット導入の進め方|準備から公開までの5ステップと、つまずきやすい3つの点にまとめています。
まとめ
問い合わせ対応の効率化は、件数を減らす取り組みというより受け持ちを決め直す取り組みだと思います。届いているものをA・B・Cに分けて、Aは任せる、Bは手前まで任せる、Cは人が受ける。この3つが決まっていれば、道具は後からでも選べます。
順番としては、①1週間ぶんを数えて仕分ける ②Cの線を先に引く ③Aの上位20件を登録する、です。実際の返り方を見てみたい場合は、無料トライアルで自社のよくある質問を登録して試してみてください。
SHIRITAI(シリタイ)は、HELATH株式会社が提供するAIチャットボットサービスです。